小学生の頃、ぼくの周りでは、サイダーといえば三ツ矢サイダーという認識だった。近くにスーパーマーケットなどなく、駄菓子屋がすべてだった時代、その他のサイダーなんて見たこともなかったし、その存在すら知らなかった。
 後年、サイダー分類されていると知ったキリンレモンは、レモンが入っているからという理由で、ぼくたちの間ではサイダー認定をしていなかった。だから今でも、ぼくの中ではキリンレモンはサイダーではないのだ。

 小学四年のある日、ある番組が始まってから、レモンの入ってない、サイダーらしきものがこの世にあるのを知ることになった。もちろん古くからある飲み物なので、他の地方や地区には流通していたかもしれない。だが、ぼくたちの住む世界には、その飲み物は存在しなかった。

 その番組とは、アニメ(当時はまだアニメとは言わずテレビ漫画と言っていた)『ゲゲゲの鬼太郎』である。その不気味な主題歌と前後して流れてきたのが、
「リボンちゃん、リボンシトロンよ・・」という初めて見聞きするコマーシャルだった。
 ぼくたちの間で、宇宙ものでも怪獣ものでもなかった鬼太郎は、当然のように話題になったが、それと同時に初めて見るリボンシトロンも話題になった。
「リボンシトロンとは何?」ぼくの周りにはその存在を知る者がいなかったので、最初はどんな飲み物かもわからなかった。
 そんなある日、クラスの一人が、
「リボンシトロンというのはサイダーみたいな飲み物らしい」という情報を仕入れてきた。それでようやく、世の中にはもう一つサイダーがあるのを知ることになったわけだ。

 さて、ぼくが実際にリボンシトロンを見たのは、いや飲んだのは、それからどのくらい経ってからだろうか。確かに飲んだ覚えはある。しかしそれがいつだったのか、どんな味だったのか、一向に思い出せないでいる。

 ぼくの中でリボンシトロンは、それほど存在感のない飲み物となっている。今でもあまりお目にかからないし、飲みもしない。ただ、鬼太郎のまんがを見た時とか、鬼太郎という文字を見た時とかに、その存在を思い出す程度だ。ゲゲゲゲゲ、ゲゲゲゲゲ・・。