2015年10月

2015年10月24日

朝の誘い

「お前にいいことを教えてやる」
仕事に行こうと急いでいる時に
電線のカラスが語りかけてきた。
もしかしてそれは本当のことで
ためになる話かもしれない。が
ヤツはそれに時間を割いている。
だからそれでいいんだろうけど
こちらはそれを聞く時間がない。

更にヤツは違う次元にいるから
こちらにはヤツのかん高い声が
カァカァとしか聞こえないのだ
これでは腹の内が見えてこない。
本当にそれがいいことなのなら
カァとしか聞えない人ではなく
大きな空に向けて語ってみろよ。
聞いてくれるカモがいるはずさ。


mengly at 02:26|Permalink詩風録 

2015年10月21日

エスカレーター

エスカレーターのある場所は
大がかりな機械が動いている
危険極まりない場所であって、
親が「その辺で遊んでなさい」
とほったらかす場所ではない。
また監視役の爺さん婆さんが
エスカレーターで遊んでいる
孫に目を細める場所でもない。

上りエスカレーターは階上に
移動するための機械であって
「ヨーイドン」で駆け下りる
ゲームのための遊具ではない。
下りエスカレーターは階下に
移動するための機械であって、
駆け上がって足や腰を鍛える
トレーニングの器具ではない。


mengly at 03:25|Permalink詩風録 

2015年10月20日

月乱れる

月乱れる、月乱れる、月乱れる。
漆黒の大きなスクリーンの上に
すでに五日ほど歳をとった月が
なぜか乱れた画像になっている。
ぼくらはアンテナの向きを変え
月のあるべき姿をスクリーンに
映そうと懸命に努力するのだが
月は思うように映ってくれない。
上の部分がスッパリ切れている。
中の部分がひどくゆがんでいる。
下の部分が微妙にかすんでいる。
これは月と呼ぶべき姿ではない。
奇妙で不気味な光のかたまりだ。
月乱れる、月乱れる、月乱れる。


mengly at 03:10|Permalink詩風録 

2015年10月15日

学園通り

1,
その高校は市の中央にそびえる
山の中腹に建っている。バスを
麓で降りて、そこからは歩いて
狭く長い坂道を登ることになる。
春や秋は様々な花が咲いていて
長い坂を忘れさせてくれるけど
夏や冬はその坂道が地獄と化す。
夏は所々の急な勾配と陽射しで
朝から汗まみれになってしまう。
冬はさらに酷くて、雪が降ると
坂は凍結してしまい、ちょっと
バランスを崩すと転んでしまう。
だからだろうか、女子の制服の
スカートは他校よりも少し長い。

2,
通りは朝方と夕方は生徒たちの
行き帰りで賑わっているものの
それ以外の時間帯は付近に住む
お年寄りが歩いているくらいで
人を見かけることはあまりない。
だから学校を抜出ても住民から
通報されることはほとんどない。
ただお年寄りも男女交際だけは
敏感で、おたくの生徒が通りで
いちゃいちゃしてましたぞとか、
バス停でキスしてましたぞとか
通報してはことを荒立てている。

3,
その坂道の一つ向うの通りには
江戸期の有名な上人が建てたと
言われている寺が存在している。
そのため通りは門前町風造りで
山門前まで商店が連なっている。
その近くにあられ工場があって
終日その香りが街を覆っている。
その香りに包まれて生徒たちは
急な坂をダラダラと登っていき、
その香りに包まれて生徒たちは
坂をいちゃいちゃと下っていく。


mengly at 09:14|Permalink詩風録 

2015年10月08日

マイナス25

ぼくの歳から母親の歳を引いてみると
マイナス25になる。この25の中に
戦前と戦中と戦後といった時代がある。
そのマイナスを経験せずにすんだから
よかったじゃないかと言う人がいるが
ぼくとしてはこのマイナスが羨ましい。
今よりも綺麗だった戦前の都市風景を
イメージとは違っていた戦中の史実を
戦後混乱期に流れていた明るい音楽を
自慢げに何回も聞かされたものだから
経験したくなったのだ。ぼくにとって
マイナス25はあこがれ年数なのです。


mengly at 03:26|Permalink詩風録 

2015年10月07日

葬儀場にて

葬式なんて、あの世から見たら
「何ばかげたことやってるんだ
もうすべては終わっているのに。
無駄な演出が多すぎるんだよ…」
なんだろうな。さらに坊主には
「浄土を見たこともないくせに
知ったかぶりなんぞしやがって
何偉そうに説教を垂れてるんだ
お前の浄土はお布施の御殿だろ」
なんて言っているにちがいない。


mengly at 00:35|Permalink詩風録 

2015年10月06日

ヘビとムカデとハエ

「ヘビ」
おれなんて胴体一本だけで
生きている動物だろう。だから
こうやって体をくねらせないと
前に進めないんだ。たまに
くねらせるタイミングが狂って
わき腹が攣ることだってある。
腹一杯だと体はくねらないし不便なものだ。
ムカデ君よ、その点君は楽でいいよな。
足がそんなにたくさんあるんだから。

「ムカデ」
何をおっしゃいますか、ヘビさん。
私はこれだけ足を持っているから
困っているんです。ここまで足が多いと
なかなか足並みが揃わないんですよ。
だからその一歩に時間がかかってしまう。
その一歩が出ないから、人から襲われる。
何度も何度も叩かれて亡くなった方を
私は知っています。足は取れ頭はもがれ
体はねじ切れ、それはもう悲惨でしたわ。

「ハエ」
その点ぼくは飛べるから楽ですね。
問題は生れた場所なんです。ぼくは
何度か転生してますけどね、今世が
一番悲惨だった。生れた所が糞の中ですよ。
しかもそれが郷愁になってしまって、
糞の臭いについつい誘われてしまうんです。
気がつけば、気が狂ったように糞と戯れ
糞まみれになって喜んでいる自分がいる。
この人生がぼくには我慢できんのです。


mengly at 01:18|Permalink詩風録 

2015年10月05日

大丈夫

『大丈夫』という文字を
こころの中に書き込んで
何かあるたびにそれを観る
何か思うたびにそれを観る
何か触れるたびにそれを観る
何か感じるたびにそれを観る
何か耳にするたびにそれを観る
何か目に映るたびにそれを観る
人が何かを言うたびにそれを観る
人が何かをするたびにそれを観る
人から批難されるたびにそれを観る
人に傷つけられるたびにそれを観る
気になることがあるたびにそれを観る
朝から晩までいつもその時それを観る


mengly at 01:35|Permalink詩風録 

2015年10月04日

くさむらの嘆き

そうやって毎日をヒョロヒョロと
うたっているのもいいんだけどね
そろそろ冬支度をしたらどうだい
そんなに肥えた土地でもないのに
人間が草を刈っていくもんだから
食糧はもうほとんどなくなったし
雨や風から身を防げなくなったし
人や鳥から身を守れなくなったし
いったいどうしていくつもりだい
お隣に棲んでいるご主人のように
外に出て食糧を集めてまわるとか
そんなこと出来ないというのなら
草の残っている場所に引越すとか
あんた本当に何とかしておくれよ
ほらまたヒョロヒョロうたいだす
この状況がわかってるんだろうね?


mengly at 02:50|Permalink詩風録 

2015年10月03日

名月

十五番目の大玉の夜に
明かに光る小玉を浮べ
涼しい風を吹かせたら
名月なる月が出来上る
その明りを身に浴びて
草むらの虫は恋をする
ねむれぬ鳥は悩まされ
のぼせた猫は身悶えし
とまどう犬は宙に吠え
時おり人は狼に変わる


mengly at 04:22|Permalink詩風録