小学二年の秋だった。図工の時間に、前の日曜日に行われた運動会の画を描くことになった。
 ぼくは、数人で走っている場面を描いたのだが、出来がよかったので、一人で満足していた。

 ところがだ。先生が、わざわざぼくの画を黒板に貼り、皆に向かって、
「よく見て下さい。この画はおかしいですね。先生の目には、中に描かれた人たち全員が倒れているように見えるんですが、N君はどう思いますか?」
「全員倒れているように見えます」
「Kさんはどうですか?」
「はい、倒れているように見えます」
「そうですね。しんたくん、もう少し工夫して描いて下さいね」

 これで自信をなくしたぼくは、わりと好きだった図画が嫌いになった。
 以来、犬を描けない、猫を描けない、人物画などもってのほかだ。中学の頃、美術の作品をまともに提出したことがなかったのだが、それもこのことが根底にあったのだ。

 もちろん高校の芸術課目は美術を選択しなかった。同じく作品を提出しなければならない書道も却下。結局人前で歌うだけで点数をもらえる気楽な音楽を選んだのだった。

 その後、竹久夢二や谷内六郎の画に興味を持ったことはあるのだが、観るのがやっとで、画を描いてやろうなどとは一切思わなかった。
 ということで、今世のぼくは、画とは縁のない人生を歩んでいるのあります。